春日真人「100年の難問はなぜ解け たのか 天才数学者の光と影」を 読む

  • 2015-07-05 ( Sun ) 08:02
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ポアンカレはダ・ビンチの如く物理学者で天文学者で哲学者で数学者であるという多彩な才能を持つ天才であり、数学にトポロジー(位相幾何学)という分野を確立した。
1904年彼が50歳の時、「ポアンカレ予想」と言われる問題を提示した。
数学的に表現すると次のようになるらしい。

「単連結な三次元閉多様体は、三次元球面と同相と言えるか」

高校時代まで数学が大の得意だった私にも何のことだかさっぱり分からないしどういう手法でアプローチできるのか想像もつかない。
この問題は宇宙の構造を考える上で重要なキーとなるほど奥深いらしい。

ともあれ、ポアンカレの確立したトポロジーは以後発展し数学界を席巻し、それまで主流であった微分幾何学を過去の遺物に押しやった。
しかし、多くの天才たちが「ポアンカレ予想」の証明(あるいはその否定の証明)に挑んでは失敗するという歴史が100年に亘って築かれたのである。
その経緯も本書には書かれているが省略する。
挙句、1998年アメリカの私設機関クレイ数学研究所が未解決の7大問題(「ポアンカレ予想」を含む)を選び解決した者に100万ドルの賞金を支払うと発表した。

そしてついに、この物語の主役であるロシア人ペレリマンが登場するのだ。
彼は幼少時より神童であり16歳(当時最年少)で国際数学オリンピックに出場し全問正解で金メダルを取っており、1992年26歳の時、ソ連崩壊のためもあり米国ニューヨーク州立大学に奨学研究員として留学した。

ペレリマンはアメリカで超難問と言われていた「ソウル予想」を証明するなど輝かしい業績を挙げいくつかの大学・研究所から教授ポストで招聘されたが留学して3年後それらをすべて断り突然ロシアに帰国した。
彼は決して裕福ではなく質素な生活を営み奨学金も残り故郷に仕送りしていたという。
アメリカでは研究者は優遇されており高額の収入が保証されるが、彼はそれを蹴ったのである。

ロシアに帰国したペレリマンは人が変わったように誰とも交流しなくなり研究に没頭した。
上記100万ドルの懸賞はこの後に発表されたものなので彼の動機が金ではないことは明らかだ。
そして、2002年ついにペレリマンはインターネット上に「ポアンカレ予想」の証明を発表したのだ。
これを見た多くの研究はどうせまた間違いだろうと思ったらしいが、ニューヨーク州立大学で彼と親しかった研究者が発表者の名が彼と知って論文の正しさを確信し彼をニューヨークに招待し講演を依頼した。
彼の講演に多くの数学者が集まったが、トポロジーの専門家たちにはその内容が全く理解できなかったらしい。
何故なら、その証明には彼らが時代遅れと馬鹿にしていた微分幾何学やその他あまり注目されていなかったいくつかの数学分野の手法が複合的に用いられていたからである。

ペレリマン自身、実際には2000年に完成していた証明を2年かけてその正しさを検証してから発表したらしい。
そして、客観的な検証には多分野の数学者が6人寄って3年以上かけて行われたという。
これらの事実からペレリマンの天才ぶりに加え求道者のように真摯な研究姿勢が窺える。

ところが、本当に驚くべきことはここからである。
彼はその証明の正しさが認められ、「数学のノーベル賞」と言われるフィールズ賞の対象に選ばれたが、それを拒否した。
さらに、クレイ研究所の賞金100万ドルも断り、隠棲してしまったのだ。
この本の著者は現地に赴き、ペレリマンの友人や恩師を介して彼への取材を試みたが梨の礫だったという。
彼は名誉も富も拒絶し母親の年金で生活していると言われている。
その理由は謎であるが、新たな難問に取り組んでいるのではないかと憶測されている。

ペレリマン、なんと天才で変人なことよ。
それは私の大好物であり、彼の存在は泣けるほどかっこいい。
本書の表紙にはポアンカレとペレリマンの写真並べて載せられているが、この2人の天才が時空を越えて常人の想像を絶する彼方で想いを交えたと思うとロマンティックでさえある。

余談だが、彼がニューヨークに留学した1年前に私(つー)もニューヨークに降り立っておりその後3年半滞在したので、私たちは同時期にニューヨークにいたことになるわけで少し親近感を持つ。
ちなみに私は本書読了後この感想文を書くのに2週間費やした。

星4つ。

なんか分からんけど、震えるほど感動しました。
もう読まなくてもいいですね。

この本、読みました
いろいろ感じたことや思うことはありましたが、
私には感想文はとてもじゃないけど書けません

私のオツムで読み終えただけでも凄いことだと…

> つーさん 
前にポアンカレの再現ドラマ?のようなものを観たことがあって、それで凄く興味を惹かれたんです。
この本も、書き手によってアプローチもかわるでしょうから、また違う世界が拡がる気がします

【天才】にとても心惹かれます

> 葉月♪さん 

私も上に書きましたように「問題」の内容については全く分かりません。
この本は具体的に分かるような解説はなくて、門外漢に対し大体どのようなものかを説明したのち人間的歴史的側面を記すことが目的という感じでしたね。

> ローラさん 

私の駄文で感動していただき嬉しく思います。
登場人物は偉いですが、この本の著者(東大卒のNHKディレクター)も大したことはないですからね。

> 葉月♪さん 

「天才」だけでも素晴らしいですが、「天才」で変人とくれば堪りません。

例えば、この記事を書いたのはこんな人

タグ: ペレリマン ポアンカレ トポロジー ポアンカレ予想 数学者

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